テレビ東京 ガイアの夜明け
夢を再び!日の丸ジェット~6人の証言者たち~
世界で航空宇宙分野の競争が激化するなか、日本も新たな時代の基幹産業として育成・強化が急がれている。この分野で日本を代表するのが、数々の国家プロジェクトを手掛ける三菱重工。JAXA(宇宙航空研究開発機構)主導の次世代大型ロケット「H3」は初号機の打ち上げ失敗後、徹底的な原因究明が行われ、再挑戦の打ち上げをなんとか成功させた。しかし、2008年、半世紀ぶりに始まった三菱重工のジェット旅客機開発プロジェクト(三菱航空機MRJ)は、6度の納入延期を経て2023年2月に計画そのものが中止となった。この間、約1兆円の開発費と15年の歳月を費やすことに。航空機産業のすそ野が広く、大小多くの国内メーカーからも大きな期待を集めていただけに、関係者からは惜しむ声が後を絶たない。そうしたなか経産省は今年3月、旧MRJの成果と課題の検証を踏まえて、新たな完成機開発に向けた新戦略を打ち出した。今後の航空機分野の需要予測を元に「ゲームチェンジの機会が訪れた」と、2035年を目途に国産旅客機開発に向けた技術開発と国際連携を進めるという。日本企業の技術力に対する信頼性を揺るがしかねないMRJからの撤退。今回の計画では、その失敗をどう総括し、新たな戦略にどう生かそうとしているのか。キーパーソンの証言などから、日本の航空宇宙産業の未来を探る。
ニッポンの底力を見せろ!H3ロケットの挑戦
7月、JAXAは大型基幹ロケット「H3」3号機を打ち上げ、地球観測衛星「だいち4号」を目標の軌道に投入した。打ち上げ費用の削減、安全性の向上、年間打ち上げ可能回数の増加などを目標に開発されたH3ロケット。宇宙開発における日本の自立性の確保とともに、商業ベースで国際競争力のあるロケットを実現させるのが狙いだ。2023年3月7日に打ち上げられた初号機は、第2段エンジンへ点火ができず、ミッションを達成する見込みがないとの判断から指令破壊信号が送出され、打ち上げは失敗となった。その後、JAXAや開発に関わる三菱重工は、失敗の原因を追究し電気系統の対策を施す。2月に2号機で初めて打ち上げに成功したが、失敗のリスクも考え大型の実用衛星を載せていなかった。そして7月、初めて衛星を軌道に投入し実用化に成功した。現場で何が起きていたのか、打ち上げ成功までをドキュメントする。
MRJはなぜ失敗したのか?関係者の証言
2024年3月期、三菱重工は過去最高の売り上げ4兆6571億円、純利益2220億円を達成した。一方でMRJ開発の主体だった子会社の三菱航空機は7月、負債総額6413億円を特別清算し解散した。苦渋の選択をした親会社の三菱重工からは「型式証明取得」を甘く見ていた…、と言う発言以外は、開発撤退についての説明はない。15年間で6度納入を延期した理由は?官民挙げての開発の立ち上げから撤退まで、当時の関係者の証言をもとに失敗の原因と課題を振り返る。
新戦略でリベンジ!経済産業省の思惑とは
MRJ開発の中止発表から約1年。2035年にメイド・イン・ジャパンの完成機の開発を目指す経済産業省の新戦略が発表された。10年で5兆円の投資がされるという。経産省で航空機武器宇宙産業課の課長を務める呉村益生さんは、MRJの失敗は「ものづくりで負けた訳ではない、ビジネスで負けたのだ」と振り返る。そして、「いまこそ今後日本が下請けに甘んじることなく、国産の完成機を開発し量産につなげるチャンス」と話す。呉村さんは海外企業との連携を積極的に行い、次世代航空機の戦略についてアピールするなど、認知を広めている。さらに航空機部品をつくる中小企業の視察にも訪れ、日本のものづくりの能力と課題を現場レベルで調べるなど着々と歩みを進めていた。果たして新プロジェクトの行方は…。